あれから30年 その後のミニマリスト

節約しすぎないシンプルライフ

介護しすぎない「ミニマムケア」

 ミニマムケアとは

親の自律能力を信じて、自立状態を長く維持するために、手伝いを最小限に抑える介護のことです。本人ができることまではしてあげないのが、本当の意味での思いやり、という考え方です。

やってあげた方が楽、その方がさっさと済むし、と思っても手を出さずに見守る。そうしないと、使わない機能は衰えていき、機能が衰えれば、自分の思い通りにできないことが増えていく。

有料老人ホームなら、たしかに手厚い介護を受けられます。イベントや手先を使う娯楽もあります。でも、人に必要とされる仕事がないのです。たとえ認知症になっても、洗濯ものをたたんだり、できることはあるのです。自宅であれば、自分でやるはずの家事を、ひとつもやらせてもらえないのです。

介護に対する考え方には男女差がある

あくまで一般的な傾向ですが、あえて手伝わない・世話をしないで介護するのは、男が多いようです。女の場合、そういう介護を目にすると、思わず手を差し伸べてしまいます。

ミニマムケアを実践する息子は、姉妹や妻が手出しすると、自分が目指してきたものが台無しにされたように感じます。やがて、彼女たちには介護にかかわってほしくないと、家族を介護から遠ざけるようになります。

逆の立場からは、「息子がケアをしていない」ように見えます。結果として、ミニマムケアは家族の間で衝突を生みかねません。

ミニマムケアが終わるとき

それは「親はまだまだ一人でやっていける」と信じる息子の期待を、現実が裏切り始めたときです。たとえば、認知症の症状が重くなり、妄想や徘徊が頻繁になり、自分が夜もおちおち寝ていられなくなったときです。

そのときに、介護を失敗した自分を責めたり、しゃんとしない親をしかったりせずに、別の道を探す必要があります。

平山亮『迫りくる「息子介護」の時代~28人の現場から~』(光文社新書